脳梗塞について

脳梗塞とは、血栓によって脳の血管の根元が詰まってしまって、先端まで血液(栄養)がいかなくなる病気です。大きさにより、3種類に分かれています。

ラクナ梗塞【小梗塞】
脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞。
脳に入った太い血管は、次第に細い血管へと枝分かれしていきます。この細かい血管が狭くなり、詰まるのがラクナ梗塞です。日本人に最も多いタイプの脳梗塞で、主に高血圧によって起こります。
アテローム血栓性脳梗塞【中梗塞】
脳の中くらいの血管が詰まって起こる脳梗塞。
動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い血管に血栓ができ、血管が詰まるタイプの脳梗塞です。動脈硬化を発症・進展させる高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病が主因です。
心原性脳塞栓症【大梗塞】
脳の太い血管が詰まって起こる脳梗塞。
心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるものです。原因として最も多いのは、不整脈の1つである心房細動。長嶋茂雄氏、小渕首相を襲ったのもこのタイプの脳梗塞です。

脳梗塞の治療には、内科的治療と積極的治療があります。

内科的治療

内科治療は、大きく分けて3種類です。一つは、血栓をやっつけること。もう一つは、血栓を作ってしまう環境となる疾患をやっつけること。最後の一つは、水分摂取です。 血栓をやっつける方法は、抗血小板剤、抗凝固剤という薬の内服です。抗血小板剤は、バイアスピリンとプレタールとプラビックスがよくつかわれます。どれがよく効くということではなく一人一人の血管の状態、病気の状態、身体の状態によって使い分けされています。心房細動が原因と思われる脳梗塞の際に内服するのが、抗凝固剤です。その抗凝固剤が、納豆がダメな薬で有名なワーファリンです。最近は、DOAC(どあっく)と呼ばれる、納豆食べても大丈夫な薬もあります。やや値段が高いのですが、ワーファリンの欠点を補ってあまりのある利点があり日本人の高齢の方には副作用が少ない良いお薬だと思います。ワーファリンは、安いのですが、実はちゃんと体の中に必要な濃度というのを毎月もしくは3カ月に一回調べなければいけません。その有効濃度には幅があり、コントロールが難しいのです。その原因は日本人の食生活です。納豆がダメなのはよく聞く話ですが、最近では、小松菜やわかめも濃度を下げてしまうようです。日本人の食生活が原因でコントロールが難しくなり、ワーファリン飲んでいても脳梗塞になってしまう人がいます。DOACは日本人の体で研究された薬もあり比較的安全に食生活も大きな制限されず、脳梗塞予防もできるのでいいと思います。血栓ができやすい状態になる理由は、血液の性状と血管の状態に関係があります。血液は、採血して試験管にしばらく置いておくと、沈殿します。沈殿している部分は、血球成分で赤血球とか白血球ですね。上には血漿(けっしょう)とよばれる水分があるのですが、上記の抗血小板剤や抗凝固剤は血球成分を引っ付けないようにしているのですが、血漿の粘度が上がる事態があると血栓ができてしまいます。 血液の粘度が上がる事態は、糖尿病、高脂血症、水分不足です。血管が傷ついたり、動脈硬化を悪化させる病態は、高血圧、糖尿病、高脂血症です。これら4つの病態が絡み合って血栓を作ってしまいます。では、水分はどれぐらいとればいいのでしょうか?成人で1日当たり、体重×30ml程度と言われています。科学的に水分を取らないと脳梗塞になったという報告はありませんが、脱水になりすぎると血栓ができやすいことはあるようです。水分を体重50kg程度の人なら1500ml飲むことになります。しかし、食事の中に500ml程度の水分が含まれていますので、だいたい1000mlは飲むように心がけることが大切だと思います。心臓や腎臓に持病のある人などは、かかりつけの先生に相談してください。

積極的治療
脳梗塞の範囲によっては命の危険にさらされることがあります。その時に行われるのが積極的加療です。2種類のやり方があります。1つは、tPA(てぃーぴーえー)(グルドパ)という薬剤を使用して血栓を積極的に溶かす方法です。脳梗塞は血管が詰まる病気ですが、脳の細胞は詰まってから数時間は栄養である血液が来なくても飢えをしのんで耐えています。この状態であれば、まだ脳を助けることができます。だいたい4.5時間から8時間で脳梗塞は完成してしまうといわれます。それを助けるための積極的な治療です。全身投与するので、消化管出血などを起こして死亡する可能性が2%あることと、脳梗塞発症して4.5時間以内に使用しないといけない上に、早ければ早いほど効果は出るが、血管再開通率は20%ほど自然再開通率が、40%ほどあるので合計60%。つまり6割は助けれる可能性があるということです。 それでもダメな場合や、施設によっては最初から外科的に血栓を取り除く血管内治療をやることができます。”血栓除去療法”です。血管の中にある血栓を掃除機付きのカテーテルや風船、投網状態の金属の網(ステント)を用いて血栓を書き出す方法です。この方法であれば8時間以内に助けることのできる患者が格段に増えました。(症状がなくなる人、症状が軽くなる人の割合が増えました。)しかし、やはり手術なので合併症も多いのが実情です。また、血栓が回収されて、血管に血液が戻った時、血管の壁が飢餓に耐えかねてもうもろくなっていた場合は出血を起こしてしまします。この状態を出血性梗塞というのですが、脳梗塞と出血の治療は逆なので大変厄介です。脳梗塞は、前触れなく突然起こります。核家族化が進んでいる今だからこそ、「その時」が来たらどうしてほしいのか、家族で話し合っておく必要があると思います。